日本には、固有の伝統的な色の名前が数多くあります。
どの色も、名前をきくだけで不思議とイメージが浮かんできます。
それらの名前にはその色をあらわすために、身近にある
「草木」「染料」「生物」などの名が使われました。
草木・・・桃色(ももいろ) 小豆色(あずきいろ) 菫色す(みれいろ)
染料・・・藍色(あいいろ) 梔子色(くちなしいろ)
生物・・・朱鷺色(ときいろ)鶯色(うぐいすいろ) 雀色(すずめいろ)
美しさの微妙な違いを的確にとらえ楽しむ
日本人の繊細な感覚を、それらの名前から知ることができます。
昔から人々に愛されてきた「梅」も
さまざまな伝統色の名前に使われています。
◆紅梅色 こうばいいろ
英名・Rose Pink(ローズピンク)バラの花の淡紅色
http://www.colordic.org/colorsample/2025.html
色味・・紅梅の花色に似て、かすかに紫味を含む淡い紅色。
名・・・紅梅の花の色をあらわした名前。
染料・・淡い藍の下染めに、紅花を上掛けした。
王朝の詩歌や物語に多く見られる「紅梅色」。
平安時代、紅梅色は早春(11~2月)の着物の色として愛好され
その服色は平安文学にしばしばあらわれます
紅梅色は、紅染の濃さによって、濃紅梅・中紅梅・淡紅梅の三級に分けられます。
・濃紅梅
平安時代、「濃紅梅」は「今様色(いまよういろ)」と呼ばれました。
「今様」とは「今、流行り」と言う意味で、当時の流行色のひとつだったようです。
・中紅梅
文献に、単に「紅梅」とある場合は、中紅梅を指します。
これは、紅梅の花の色にあたります。
・淡紅梅
薄紅梅(花色が薄い紅梅)の花の色。
◆梅鼠 うめねずみ
英名・Rose Dust(ローズダスト)ほこりっぽい薄バラ色
http://www.colordic.org/colorsample/2022.html
色味・・赤みがかったうすい鼠色。
名・・・梅鼠の[梅]は、梅屋渋の染に見るような赤みの形容語。
染料・・梅屋渋(梅木の煎汁に榛皮の煎汁を加えたもの)に
灰汁・明礬・石灰・鉄漿を用いれば、微妙な赤みの鼠を得ることができる。
幕府による奢侈(しゃし)禁止令により、派手な衣服が制限されていた江戸時代。
庶民たちは、厳しく制約された暮らしの中で
自分の個性を精一杯表現しようとしました。
鼠色(ねずみいろ)や茶色に、微妙な色調の変化をつけ
奥ゆかしい色合いを楽しむのが、当時の庶民たちにとって
「粋(いき)」とされたのです。
こうして梅鼠など「四十八茶百鼠」といわれる
多くの渋味の色が、江戸時代を彩りました。
※「四十八茶百鼠」・・・ 茶色には48種類、鼠色には100種もの色があるという意味。
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