九月・長月

日ごとに涼しくなる頃
五感を研ぎ澄ませて 小さな秋を見つける…

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九月の上旬はまだまだ残暑が厳しいですが
中旬をすぎると朝晩は涼しくなり、しのぎやすくなってきます。
下旬になって台風や秋雨が通過すると、空気が冷たくなり
秋らしくなってきます。
空気も爽やかになり食べ物がおいしい実りの秋を迎えます。

立秋は八月ですが、肌に初秋を感じるのは九月。
秋の彼岸を過ぎればめっきり秋らしくなります。
八月下旬から九月にかけては台風シーズンで、台風接近前の
湿気をはらんだ暑さは耐えがたいものがありますが
台風一過の秋空は夏から秋への移り変わりを示してくれます。
空は高く、限りなく青く澄みわたり、清々しい。
爽涼の風が木々の間を渡りはじめます。
いわし雲に代表される秋の雲は、垂直に盛り上がる夏の積乱雲とはことなり
水平に広がるようになり、青い空を流れていく美しい雲は
見飽きることがありません。

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九月は、辺りの木々もすっかり色づき紅葉の頃。
空気も澄み切っていますから夕暮れが美しい時季。
しかしあっという間に辺りは暗くなる「秋の陽のつるべ落とし」

語源は諸説あり。
九月は菊の季節であることから菊月、菊間月とも呼ばれますが 
新暦の十月上旬から十一月の上旬にあたり
夜がだんだん長くなる「夜長月(よながつき)」の略とする説。
その他、雨が多く降る時季であるため
「長雨月(ながめつき)」から「長月」になったとする説。
「稲刈月(いなかりづき)」「稲熟月(いなあがりつき)」
「穂長月(ほながづき)」の約や、稲を刈り収める時期のため
長月の「長」は稲が毎年実ることを祝う意味からといった説。
「名残月(なこりのつき)」が転じたとする説などがある。
この中でも「夜長月」の略で「長月」になったとする説とする説は
中古より広く信じられている説で最も有力とされています。

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●別称
紅葉月(もみじつき)/稲刈月(いねかりつき)/菊月(きくづき)/
玄月(げんげつ)/色取月(いろとりづき)/寝覚月(ねざめづき) など。

旧暦の九月は、秋の最後の月にあたるので
「晩秋」 「窮月」(きゅうげつ) 「暮秋」(ぼしゅう) 「残秋」「末秋」などと呼ばれています。
最も一般的なのは「長月」で、秋も深くなると日がくれるのも早くなり
長時間にわたって美しい月が見られるので、この名が付いたと言われています。
他に、菊の花が咲き誇る月なので「菊月」 「菊開月」(きくさきづき)
また、紅葉の季節に入ってくるので「紅葉月」(もみじづき)とも呼ばれています。
菊や紅葉もさることながら、九月の空は澄みきって
特に月が美しく感じられる月で満月の十五夜には古くから
「お月見」をする風習が行われていたことから「祝月」(いわいづき)
 「詠月」(ながめづき) 「寝覚月」(ねざめづき)などの名称もあります。

■季節の言葉 
新秋、新涼、初秋、秋の長雨、秋霖、名月、良夜、露の秋、白露
虫の音、野分、寝覚月、中秋名月、台風、秋晴れ 

初秋の候 涼秋の候 新秋の候 秋色の候 爽秋の候 
秋の夜 涼風の候 秋分の候 秋涼の候 秋冷の候 秋霜の候
新秋のみぎり 秋の七草も咲きそろい など  

燈火親しむ好季となり 
灯火の下、読書に親しむ秋 
黄金色の波ゆらぎ、実りの秋
ひと雨ごとに秋も深まり 
残暑去り難く 
朝夕日毎に涼しくなり 
虫の音もようやく繁くなり
二百十日も無事に過ぎ 
初雁の姿に秋を感じる頃 
秋色しだいに濃く 

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九月は、重陽(ちょうよう)の節供、お月見の行事
彼岸の中日となる秋分の日などがあります。

九月を旧暦で長月(ながつき)といい、現在の暦でも使われています。
長月は、夜をだんだん長く感じる月の「夜長月」が略されて
長月になったとする説が有力です。
1年の間でもっとも夜が長いのは冬至の前後ですが、夏は夜が短いので
旧暦の9月に入ると急に夜を長く感じるのでしょう。
他に「色取月(いろどりづき)」、「竹酔月(ちくすいづき)」、「菊月(きくづき)」
「小田刈月(おだかりつき)」、寝覚月(ねざめづき)、「紅葉月(もみじづき)」など
秋の趣きを現わす別名もあります。

また、古来我われの先祖にとって稲の生育と収穫は最大の関心事でしたが
稲穂の長く満ち成る「穂長月(ほながづき)」あるいは稲を刈る
「稲刈月(いながりづき)」が、なが月になったとする説もあります。

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【防災の日/9月1日】
1923年(大正12年)のこの日に起きた関東大震災の教訓を
忘れないという意味とこの時期に多い台風への心構えの意味もこめて
1960年(昭和35年)に制定されました。
この日に地震や災害に備えて、避難訓練が多くの場所で行われます。
また非常時に備えて防災用品などのチェックもこの時期にしておきたいもの。
(この頃は暦の上では立春から数えて210日、
特に「二百十日」(9月1日頃)と呼びます。丁度稲の開花時期にあたり
強風が吹き荒れることに注意を促したものといえます)
制定の前年には伊勢湾台風が襲来していました。

【白露と秋分】
お盆を過ぎた頃から目に見えて日が短くなってきましたね。
昼間の残暑は厳しいけれど,それでも夕暮れ時の赤い雲や
風の音などに注意してみると,どこか秋の気配が漂っています。

9月になると、二十四節気でも白露と立秋を迎え如何にも涼しげです。
二十四節気は、太陽の黄道上の位置によって決められた季節区分で
太陽の黄経が0度になった時を“春分”と呼び
そこから太陽が15度進むごとに、清明・穀雨・立夏・小満…と呼ばれます。

毎年9月8日~9日頃に迎える白露(はくろ)は
“大気が冷えて露ができはじめる頃”という意味で
天文学的には太陽の黄経が165度になったとき。

また9月23日頃に迎える秋分は,昼と夜の長さが等しく分けられた日。
この日、太陽は真東から昇り真西に沈みます。
また黄経が180度となって,太陽は天の赤道を北から南へ通過し
以降、北半球では夜が長くなっていきます。

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◆ 重陽の節句(ちようようのせっく)
旧暦9月9日の節句。五節句の一つで、菊の節句、重九(ちょうく)、
お九日(おくんち)とも呼ばれる。陽数(奇数)が重なるめでたい日。
古来中国ではこの日に小高い山に登り、長生きの効能があるとされる
菊の花を浸した菊酒を飲んで不老長寿を願う風習があった。
これが奈良時代に伝わり、平安時代には宮廷行事として定着。
江戸時代以降、秋の収穫祭と結びつき「お九日」として庶民にも広まった。
九州北部の秋祭りとして知られる「長崎くんち」「唐津くんち」などは
「お九日」に由来するとされる。

◆ 秋分(しゅうぶん)
二十四節気の一つで、旧暦9月23日頃。
春分と同じくこの日に昼夜の時間が等しくなり、この日を中日として
前後3日の計7日間が秋の彼岸にあたる。
先祖の墓参りをし、邪気を祓うとされる小豆を使った「おはぎ」をそなえてたべる。
秋分の日は、1948年に「先祖を尊び、亡くなった人をしのぶ日」として
法律で制定されました。この時期を境にして夏の暑さも終わりを告げ
秋が深まり始めます。

地球の赤道を延長した天の赤道と太陽の通り道の黄道が
ちょうど交差したところが黄径0度。
秋分とは、太陽が黄径180度(秋分点)を通過するときのこと。
春分と同じく、太陽が真東から昇って真西に沈み
昼と夜の長さがほぼ同じになります。
太陽が極楽浄土があるという真西に沈むことから
亡くなった人をしのぶ日とされています。

春分・秋分の3日前から7日間をそれぞれ春の彼岸、秋の彼岸とします。
※春分・秋分は「彼岸の中日」といいます。彼岸は日本独自の行事です。
「暑さ寒さも彼岸まで」と言われ、この日を境に寒さが増してきます。

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■ 秋の彼岸とおはぎ
9月23日の秋分の日をはさむ3日間を「秋の彼岸」といい
春の彼岸の場合と同様に墓参りをします。
春の彼岸に供えた「ぼた餅」を、秋の彼岸に「おはぎ」と呼ぶのは、
小豆のあんを春はボタンの花、秋は萩(ハギ)の花に見立てるからだそうです。
ちなみに、秋にとれたばかりの小豆は皮も柔らかいので、
おはぎには皮ごと使った粒あんを使い、皮が固くなった春には
皮を取り除いたこしあんを使ってぼた餅を作るそうです。

◆ 秋の社日(あきのしゃにち)
雑節の一つで、秋分に最も近い戊(つちのえ)の日。
春の社日と同じく土地の守護神を祀る日で、秋の社日には
神様に初穂を供えて収穫を感謝する。

◆ 敬老の日(けいろうのひ)
9月の第三月曜日は「敬老の日」です。
この前身になっているのは、1947年(昭和22年)
兵庫県多可郡野間谷村の村長が提唱した「としよりの日」。
昭和26年から全国的に祝われるようになった「年寄りの日」。
これが昭和41年に「敬老の日」と改称され
国民の祝日のひとつとなりました。
2002年までは9月15日でしたが、2003年から
成人の日・体育の日と同様、移動祝日となりました。
敬老の日には、お年寄りのいる家庭では、お年寄りを中心に
祝い膳を囲んだり贈り物をさしあげるなどするのが一般的な祝い方です。
また、敬老の日に忘れてはならないのは、老人と同居して
その面倒を見てくれている兄弟・姉妹、その配偶者への感謝です。
老人への贈り物をするとき
一緒にねぎらいの気持ちを表現してあげたいものです。

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●二百十日(にひゃくとおか) 
9月1日頃。立春から数えて210日目。 

この時季は稲が開花・結実する大事なときですが
台風が相次いで襲来し、農作物が被害を受けてしまうことがよくあり
厄日とか荒れ日などといわれています。
一つの目安として警戒を呼びかけていたようです。
立春から数えて220日目の二百二十日も厄日と考えられています。

二百十日は伊勢の船乗りたちが長年の経験によって凶日としたといわれていて
雑節として暦に記載されたのは江戸時代で、八十八夜とほぼ同じ頃です。
先人たちの経験に基づいた生活の知恵が暦となっているのです。

◆ そぞろ寒(そぞろさむ)  
「冷やか」よりも強く、また、晩秋になって覚える寒さを表す
「やや寒」(秋の季語)よりも柔らかに感じる秋の寒さ。秋の季語。
本格的な冬の寒さ寂しさを迎える前の、覚悟の決め際の寒さか。 
   
◆ 冬隣(ふゆどなり)  
秋も終りになると、日差しも薄く弱くなって冬の到来が近いことを感じる。
季節は日々少しずつ巡るが、ある日ついに
冬の隣にやってきたかと思うようなとき。
同じ頃の秋の季語に「冬近し」「冬を待つ」などがある。

◆ 虫聞き(むしきき)
秋になく虫の音色を愛でること。江戸時代には「庶民の五つの風流」として
花見、月見、菊見、雪見、と並んで楽しまれた。
当時は谷中(東京)の道灌山(どうかんやま)や上野の不忍池などが虫聞きの名所で
多くの人々がゴザと酒を携え訪れたという。
鈴虫や松虫、邯鄲(かんたん)は特に人気で
虫籠に入れて江戸の町を売り歩く虫売りも現れた。
先人にならって秋の夜長には虫の音色に耳を済ませるのもいいですね。
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◆ 涼風(すずかぜ)
夏も終りの頃に吹く涼やかな風のこと。「りょうふう」ともいう。
夏の気圧配置(南高北低)が崩れ、吹いてくる。
実際はまだ残暑厳しい日が続くが、熱風の中にちょっとした涼しさを感じた先人たちが
季節を先んじる気持ちを込めて呼んだ風の名前。

◆ 秋のお菓子
秋のお彼岸のおはぎにお月見の団子、皿に秋が深まると栗のお菓子に
リンゴや柿、サツマイモを素材にしたお菓子・・・。
秋はお菓子がつきものの行事が目白押しで、しかもお菓子そのものが旬の季節。

行事もお菓子もしっかり味わって、実りの秋を全身で感じたいものです。
ところで、旧暦9月9日の重陽の節句は菊の節句とも呼ばれ
平安時代の宮中では菊を愛で、菊の花を浮かべたお酒が飲まれていました。
和菓子の世界ではいまでも不老長寿の象徴である菊にちなんだお菓子は大切にされ
慶弔用のお菓子をはじめ、菊慈童(きくじどう)や菊最中などが作られています。

和菓子屋さんのショウケースに菊のお菓子が並び始めたら
その昔、宮中で優雅な秋の行事が営まれていたことを思い出してみてください。

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◆ 秋の時候のあいさつ
初秋の候、清涼の候、秋涼のみぎり、秋の気配が感じられる頃、
野山も秋色をおび、虫の声も美しく、スポーツの秋を向かえ、など。
手紙を書く際には時候のあいさつを使うときは
頭語である「拝啓」「謹啓」などに続けます。
はがきの場合は頭語を省略してもかまいません。
時候の挨拶は、目的や相手との関係によって、丁寧な表現や
親しみやすい表現などを使い分けるのが肝要です。
時候のあいさつの後に、先方の安否を気遣う文句を続けます。
たとえば、ますますお元気でご活躍のこととお慶び申し上げます。
皆様いかがお過ごしでしょうか、などです。
時候のあいさつと安否を気遣う言葉が、一般に手紙やはがきの「前文」となります。

◆ 季語
9月の季語
初秋/新秋/新涼/清涼/孟秋 ・初秋の候・新秋のみぎり・秋の七草も咲きそろい…など

◆ 誕生石
9月の誕生石:サファイア

◆ 月の花
9月の花:りんどう(竜胆)
花言葉
「あなたの悲しみに寄りそう」「誠実」「正義」
「悲しんでいるときのあなたが好き」「貞節」「淋しい愛情」

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