◆卯月(うづき)
旧暦では「卯の花(ウツギ)」が咲く頃。
卯月の「う」は「初(うい)」「産(うぶ)」で
農耕の1年の初めの月を意味したともいわれます。

800540-1920

卯木(うつぎ)の花が、随所に咲き乱れるので「卯月」
または「卯の花月」とよばれています。
卯木の花は、古くから日本人に親しまれてきた花で
満月が卯の花を照らす光景を愛でて「卯の花月夜」と表現しました。 
気候的には暖かくなり,太陽の光に恵まれるようになった月という意味で
「正陽」「純陽」「六陽」などとも言いました。
また、旧暦の四月は夏にあたるので
「初夏」「新夏」「孟夏」などとも言われていましたが
現実感がないのでほとんど使われていません。
桜の散ったあとの余りの月ということから「余月」
桜の花のない月ということから「陰月」とも言われていました。

卯の花は晩春に白い花を咲かせますが
稲の苗や農作物の種を植えるので
植え月が“うづき”になったという説があります。
卯月は今の五月ごろで、他に乾月(けんげつ)、花残月(はなのこりづき)
夏初月(なつはづき)の別称もあります。
花残月とは、山あいにまだ桜の花が咲き残る月のことです。

69765879

四月は春たけなわ、国中の花々の大部分が一斉に咲き乱れ、自然が華やぐとき。
陽光の明るさが増し、人のこころも活動的になります。
年度始めの月で、入学や入社や転勤など、新しい門出となる月です。
四月の陰暦月名は卯月。陰暦十二ヵ月で花の名がついた唯一の月です。
卯の花が咲く月という意味で、卯花月(うのはなづき)とも言います。

4月は卯月、卯花月、花残月、清和月、鳥月とも呼ばれます。
卯月や卯花月は卯の花が咲く頃からということでしょう。
平安時代、女性の衣の襲(かさね)にも卯の花があります。
表を白、裏が萌葱でこの色目は4月に装っていたとか。
花残月は桜が咲き残るというイメージでしょうか。
清和月というのは空が晴て清らかに暖かいことを
清和ということからの呼び名です。
晴れて清らかだけなら秋になりそうですが
暖かいが加わるとやはり春4月なのでしょう。

maxresdefault


◆四月の異称

卯月(うづき)utuki
余月(よげつ)
陰月(いんげつ)
卯花月(うのはなづき)
花残月(はなのこりづき)
夏初月(なつそめづき)
木葉採月(このはとりづき)
得鳥羽月(とくちょううづき)
初夏(しょか)
首夏(しゅか)
孟夏(もうか)
始夏(しか)
維夏(いか)
立夏(りっか)
麦秋(ばくしゅう)
正陽(しょうよう)
六陽(りくよう)
と、夏・陽の付くものが多くあります。

六気(ろっき)
仲呂(ちゅうろ)
純乾(じゅんかん)
乾梅(かんばい)
修景(しゅうけい)
小満(しょうまん)
と、ひどく難しいものまで合わせると、四十種近くあります。

卯月とは卯の花(空木)月の意味で、垣根に卯の花が咲く月ということ。 
夏の字の付く名が多いのは、旧暦思想では三月までが春、
四・五・六月は夏となっていたから。 

麦秋というのは、今では五月に対しても使いますが、
麦が黄色に熟する収穫月の意味です。 

暦の上では夏と呼んでも、実際はまだ春です。
その一日をエイプリルフールと言って、ユーモアの日とするのも、
いよいよ春らしくなった喜びの記念でしょう。

gatag-00000243

●定番のあいさつ

桜花の候 春爛漫の季節を迎えました。

春のけはいがようやくととのったようで・・・・・・

拝啓 麗春の候、お元気でお過ごしのことと存じます。

春の日差しが心地よい毎日でございますが、いかがお過ごしですか。

花便りが各地から届くこのごろですが・・・・・

春たけなわの季節となりました。いかがお過ごしですか。

春の日差しが心地よい毎日でございますが・・・

春陽のみぎり、ますますお元気でご活躍のことと存じます。

拝啓 春爛漫の候 お変わりはありませんか。

gatag-00000318

■気候や開花にまつわることば

【花冷え】
桜が咲きほこる時期に、暖かくなった気候が
一時的に冷え込むことを表します。

【花曇り】
桜が咲く時期の曇り空のこと。
渡り鳥が移動する時期なので、鳥曇りとも呼びます。

【桜流し】
春の雨で桜の花びらが落ち、流されていく様を言います。
また、桜を散らしてしまう雨のことも表します。

【桜前線】
日本各地の桜(主に染井吉野)の開花予想日の
同じ日付の場所をつないだ地図上の線。
マスコミの造語で、気象庁による正式名称は
「桜の開花の等期日線」といいます。
3月上旬に九州や西日本からスタートし、次第に北上して
5月上旬に北海道に至ります。

【花時】
花が咲く頃や盛りになる頃のこと。
特に桜が満開になる時期を指すことが多いことばです。

■桜の花の様子をあらわすことば

【こぼれ桜】
桜の花が満開で、まるで地面にこぼれ落ちたように見える様子のこと。
また、桜の花びらを散らした模様を指します。

【花吹雪】
満開の花、特に桜の花びらが風に吹かれて舞い散る様子が
まるで雪が吹雪いているように見えることから生まれたことばです。

【花明かり】
桜の花が満開で、闇の中でも辺りをほんのりと
明るく照らしているように感じられる様子を言います。

【花筏(はないかだ)】
水面に散った花びらが筏のように流れていく様子を言います。

【花の浮橋】
水面に散った花びらが橋のように集まっている様子。
gatag-00002420
◎清明(せいめい)4月5日~4月19日頃 

旧暦3月の節気。 春分から15日目。
春先の清らかで生き生きとした様子を表した
「清浄明潔」という語を略したもの。

清明とは万物が若返ってすがすがしく、明るく美しくなることです。 
日本列島はさまざまの花が咲き乱れ、特に桜前線が次第に北上して
お花見シーズンの当来で、人々の心が浮き立ってきます。
南の地方では、越冬つばめが渡って来る頃でもあります。
いよいよ冬と決別して、温暖な季節となるので
旧暦時代には4月1日を衣替え(ころもがえ)の日としていました。
この日から冬の着物の綿入れを脱いで袷(あわせ)に着替えるところから
四月一日と書いて「わたぬき」という姓があるほどです。
もっとも、太陽暦の4月1日に衣替えをすると
風邪を引くおそれがありますからご注意を!
清明の節の終りから、次の穀雨の頃になればちょうど良いでしょう。

古くから中国では、清明の日に人々は郊外に出て春の風物を楽しんだり
先祖の墓参りをしました。
沖縄では「清明祭(シーミー)」といって、墓前に親族が集まり
酒・茶・お重を供えた後、皆でご馳走をいただく習慣があるそうです。 
沖縄ではお墓の前は「清明祭」をするための広いスペースが設けてあります。
ここで、お重を囲んで宴が催されるのだそうです。
気候もいい頃ですし、今ではピクニック感覚で
どのお墓もとても賑やかだとか。 

穀雨

◎穀雨 (こくう)4月20日~5月5日頃 
旧暦3月の中気。

穀雨とは稲や麦などの穀物の生長を助ける雨のことで
その雨の降る頃が穀雨の時期です。

春雨が百穀を潤すことから名づけられたもので、雨で潤った田畑は
種まきの好期を迎えます。
山野は穀雨の恵みによって緑のカーペットに覆われます。
この頃の雨は穀物だけでなく、あらゆる植物の生長を助けます。
南の地方ではトンボが飛び始め
冬服やストーブとも完全に別れる季節です。
変わりやすい春の天気もこの頃から安定し日差しも強まってきます。

もともとは、秋に種をまいた麦類の生長を助ける雨のことで
麦は穂が出て実を着けるようになります。
のちに稲にも適用されるようになりました。
穀雨の節気の終り頃、八十八夜(5月2日)となります。
立春から数えて88日目のことです。
この頃、多くの地方で霜が降らなくなります。
「八十八夜の別れ霜」とはそのことを指します。

しかし、時としてこの頃に遅霜(おそじも)が降りて
農作物に被害を与えることがあります。
これを「八十八夜の毒霜」といいます。油断大敵です。
八十八夜の頃から茶摘みが始まり、香りの良い新茶が
私達の味覚を楽しませてくれます。

8580687194_ca8f7a3d7a_b

◎お花見
お花見は、日本人が古来から楽しみにしていた春の行事です。
「花見」といえば桜の花を見るために野山に出かけること。
桜以外の花を見に行くときは「梅見」「観梅」「観菊」などと
その花の名前をつけて表します。
昔から日本人にとって「桜」は特別な花でした。

奈良時代には、花といえば梅や萩などを指していましたが
平安時代の貴族たちは桜を春の花の代表格として愛で
歌を詠み、花見の宴を開いて楽しんでいました。 
以来、この時季に咲き誇る花は、桜以外にも桃や菜の花など色々ありますが
日本人にとっては「花」といえば桜の花を意味するようになりました。

また、お花見は豊作祈願の行事として、農民の間でも行なわれていました。
桜は、春になって山からおりてきた田の神様が宿る木とされていたため
桜の咲き方でその年の収穫を占ったり
桜の開花期に種もみをまく準備をしたりしていました。
「サクラ」の語源には諸説ありますが、一説によると
「サクラ」の「サ」は田の神様のことを表し
「クラ」は神様の座る場所という意味があり、「サクラ」は 
田の神様が山から里に降りてくるときに、いったん留まる
依代(よりしろ)を表すとされています。
また、桜の花が稲の花に見立てられ、その年の
収穫を占うこ とに使われたりしていたため、「サクラ」の代表として
桜の木が当てられるようになったという説もあります。
豊作を願って、桜のもとで田の神様を迎え、料理 や酒でもてなし
人も一緒にいただくことが本来のお花見の意味だったのです。

江戸時代になると、春の行楽としてお花見が庶民の間にも広がり
酒を酌み交わすお花見になっていきました。
江戸時代は、園芸が盛んになった時代でもあり
桜の品種改良が進んだことで、身近な場所で
お花見が楽しめるようになったのです。
三代将軍家光が上野や隅田河畔に桜を植え、八代将軍吉宗は
飛鳥山を桜の名所にし、花見の場も増えました。これらは今でも
東京のお花見の名所になっています。

145261_2

◎おぼろ月【朧月】
春の月は、ボンヤリと見えて輪郭がはっきりしていないことが多いですね。
これは、昼間の霞と同じ性質の空中に浮かぶ浮遊物のせいです。 
霧・モヤ・煙霧などによって視界がさえぎられて月がかすんで見えたり
その周りにボンヤリとしたまるい輪が見えたりします。 

春は移動性高気圧が通過したあとに温暖前線が近づいてきますが、
そのとき、まず絹雲・絹層雲・次いで高積雲・高層雲が現れます。
この層雲は霧状だから、地上から通して見れば
太陽や月がかさをかぶって見えたり、
おぼろに見えたりします。

また春は、夜間に冷え込んで地面付近の気温が下がっているところへ、
南からあたたかい風が吹いて、
上空のほうが比較的温度が高いという『気温の逆転層』を作ります。
この層の下に霧が出来やすいので
ほんのりと美しいおぼろ月が見えたりします。


gatag-00000206

◎春の土用(はるのどよう)  
立夏までの約18日間にあたる雑節の一つ。春の土用の入りは新暦4月17日頃。
土用とは「土旺用事」の略で、陰陽五行説による季節の割り振りで
四季に配当(冬:水、春:木、夏:火、秋:金)されなかった
「土」の支配する時期として
各季節の末18日ないし19日間を指すもの。
季節の変わり目にあたる。現在は夏土用のみを土用と言うことが多い。

◎春眠
「春眠暁を覚えず」と、中国・唐の孟浩然(もうこうねん)の詩にある通り
冬から春への変わり目はとかく眠気を感じます。
植物が芽吹く春は、人の体も新陳代謝が盛んになり、エネルギー代謝に必要な
ビタミンB群が不足して眠くなるようです。
春の眠気対策に、ビタミンB群が多い菜の花(「なばな」)をサッとゆでて
お浸しや炒め物にしてみましょう。
鮮やかな色と春の香りに、体もシャキッと目覚めるでしょう。

09955a

桜は古くから親しまれており、私たちの暮らしの中に深く根付いています。
春の気候や情景を表すことばにも
「桜」が使われているものがたくさんあります。
古くから「花見」といえば「桜」の花を見ることを意味したように
日本人にとって桜は特別な花。ただ「花」と表されていても
桜を指すことが多いです。

桜の蕾が赤みを帯びる頃は、私たちのからだが上を向きたいと思う頃。
その溢れんばかりの力強さを少しでも感じたくて
背筋が自ずと伸びるのは私だけでしょうか。
ほころび、そして花が開きはじめると、からだも開いていく。
花を愛でれば、少し前の愁いも次第に消え、活動的になっていく。
桜の便りが北上するとともに、日本に住む人の気分も
上昇しているとしたら、とても喜ばしいことです。